光の歴史家
男、歌う
ニシブチ(北風)にすっくと立ち
女、返す
ハイヌミカゼ(南風)に髪なびかせ
光、舞う
ケンムン(妖怪)はマングローブに隠れ
光、漂う
サンシン(三線)はコバルトの海に響き
そんなときだ
湿板はそっと風景を受け止める
両手をいっぱいに伸ばして
奄美を胸の底まで吸い込むのだ
湿板よ
記憶のダイバーよ
湿っている間にシャッターを押せ
湿板よ
瞬間のアスリートよ
湿っている間に暗室に走れ
本当の光は
風土の中でしか出会いない
菅原一剛は
奄美の島で今日も
光の歴史家である
博報堂生活総合研究所所長 関沢英彦