装置

ちょっぴりヤケになってしまいそうな出来事や、
自分ではどうすることもできないことがある。

今の私がまさにそうだ。

駅に向かう道を歩きながら、
何度も何度も同じ考えが頭の中をぐるぐる回る。

「もう、あきらめよう」

何巡目か思考の途中で、
口をついて出そうなほど、きっぱりとした言葉が浮かんだ。

そう思った瞬間、
ふと足を止めてしまうような風景が目に映る。

それは別に、
なにか特別な、祝福された風景だとかではなくて、
いつもの見慣れた場所のはずなのだ。

光の当たり具合なのか、
植物の生育の具合なのか、
季節の巡り合わせなのか。
もしかすると、ちょっとした角度の違いなのかもしれない。

「またか…」

きっと私は苦笑している。

イタズラだとしたら、
一体誰の仕業なのだろう。

この一瞬のせいで、
私はまた歩き出すのだ。