町のはずれで出会った野良猫 近づこうとする私の気配に 素知らぬ顔をして距離を保ちながら 時折 振り返っては 視線を送ってくる 「こっちだよ」 そして辿り着いたのは 小さい頃 遊んでいたはずの雑木林 春をまつ 裸木たちが立ち並び 寒空の下 遊ぶ子供の声は聞こえない 歩を進めようとした瞬間 その気配で 頭上の枝から 鳥たちの群れが飛び立った 小石を投げ込まれた水面に出来る波紋のように 曇り空に黒いシルエットが幾重にも広がり そして 消えた やってくる静寂 気がつくと 野良猫は姿を消していた