「カシャ…ッ」 それは突然やってきた。 たぶん、実際は音なんかしなかった。 何かが結晶する、その瞬間のイメージ。 ものすごく透明で 光を乱反射させる そんな何かがカキーンと固まるところ。 今まで“全体”だったものが 新しい全体の “一部”になる瞬間。 人混みのどまんなかで そのイメージにとらわれたまま動けなくなる。 なぜだか 自分の脛の毛穴一つ一つから冷たい蒸気が噴き出すのを感じてた。