2006.09 「父親」

 

 

この前、法事の為に両親が上京した。その夜は近い親戚が集まりみんなでご飯を食べた。久しぶりに会った両親は二人とも前より少しふっくらしていた。
親とは、子供にとってやはり不思議な存在である、多分向こうの方がそう思っているに違いないが...。僕は二十歳の時に神戸の実家を出たのだけれど、それまでは親のことを、自分を生み当たり前に育ててくれた存在としか見ていなかった。散々わがままを言い、親の苦労も知らず、時にはくだらないことで反抗したりした。
今だって子を持つ親の気持ちなんて全然わからない。でも今はあの頃とは違った見方で親のことを見ることができる。
去年還暦を迎えた父は、今の僕くらいの年齢で息子三人を母と共に育てていた。正直言って今までは父のことを尊敬したことなどなかったかもしれない、親から与えられるいろいろなことを当たり前だと思ってきたからだ。でも自分が三十歳をすぎだんだんいろんなことの難しさを知るにつれ考えが変わってきた。
当たり前なことなど何処にもないのだ...。
そう考えると今まで好き勝手してきた自分が少し恥ずかしく思える。
目の前では少し酒に酔った父が旨そうにタバコを吹かす。
「自分の好きなようにやっていけばいい」 と僕に言う。
僕の半分はこの父からできている。
カメラを覗きながら、そんなことを考えたらなんだかとてもうれしくなった。