八月の半ばおじいちゃんが亡くなった。ぼくはおじいちゃんが大好きだった。
小さい時からとても僕を可愛がってくれたじいちゃんは、昔個人タクシーの運転手をしていた。まだ夜中の暗い時間から毎日働きに出かけていた、帰りはお昼くらいだ。時々帰りに僕の好物のバナナをでっかい房ごと抱え笑顔で帰ってきた。『なお、おみやげだ。一日で食うなよ!(笑)』 僕はあればあるだけ食べてしまう。 じいちゃんは昼過ぎから夕方まで二階の部屋で帳簿付けをする。夜は七時、八時には寝てしまうので夕飯は早い。
晩ご飯の支度が出来ると、呼びに行くのは僕の役目だ! 階段を上り部屋の重い引き戸をゆっくり開けると、薄暗い部屋の中でたいがいじいちゃんは布団に入り昼寝をしている。『じいじ、ご飯だよ』
しばらく起きない。でも僕は部屋を出て行かない。布団のすみっこ、じいちゃんに体を引っ付け横になる。じいちゃんのにおいがいっぱい詰まった部屋、かすかに聞こえる下のみんなの笑い声。好きな時間だった。しばらくしてじいちゃんが目覚める、そして反対に寝てしまった僕をおんぶして、一段一段ゆっくり階段を下りるゆく。大きくてあったかい背中。
一番安心できた場所。
『僕は本当はいつも寝てなんかいなかったよ、じいじ。
あのあったかい背中におんぶさされたくて、眠った振りをしていたんだよ。』
いっぱい、いっぱい ありがとう。
じいじ、またいつか。
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