五月、南米に行ってきた。どうせ行くなら長い旅にしようと決めた。でもなんで南米なのか?選んだ理由が自分にちゃんとあったわけではなく、ただ何と言うか...前に行ったメキシコの旅の続きをしたかったのと、どうせ行くならなるべく遠い国に行きたかった...そんな簡単な(?)思いからだった。
最初は一人旅の予定だったが、南米行きを話したのがきっかけで友人のタカとその友達のレイ君としばらく一緒に回ることになった。ペルーのリマで二人と合流し、町で知り合った女の子二人もそこに加わり、南米旅行のはじまりは何だか賑やかに始まった。
ペルー国内を回る時は、メキシコと同じく長距離バスは欠かせない。そのほとんどが二千メートルを超す高地なので鉄道よりも小回りがきくバスが発達しているのだ。ナスカまで七、八時間海岸線を走り続ける。最初はバスで八時間?!とみんな驚いていたが、旅の終わり頃には慣れてタフになり、タカ達はボリビアからペルーのリマまで連続二十七時間乗車という聞くだけで吐きそうな離れ業をやってのけたのだからすごい。(笑)
ナスカでは五人でセスナを借りきり地上絵を見た。想像より案外絵が小さめで空中から探すのに苦労した。まぁこんなものかな...と 。 かなり急ぎ足だが、その日の夜中に夜行バスでクスコと言う町まで向かった。街全体が世界遺産に指定されているだけあり町並みが美しかった。マチュピチュへの中継地点でもあるこの町には欧米人観光客も多いい。
五人ということで何かと良いことがいくつもあった。宿は一人の時より安くなるし、食事の時は今日一日起こったことをワイワイ話せるので、こうやって大人数の旅も楽しいものだなぁと思えた。でもその反面みんなと居るとそこで楽しくなってしまうので、なかなか地元の人との出会いや一人で行動するこその発見が少し減ってしまっていた。それでも今は一人旅では味わえない感覚を十分楽しんでみようと思っていた。
二日間クスコに滞在後、今度は列車でマチュピチュに向かった、クイックターンを繰り返し列車は標高を駆け上がる。以前から一度は行ってみたかった場所。標高二千二百メートルを超える『空中都市』。昔スペイン軍に襲われたほとんどのインカの都市、でもここだけは発見されることなく昔の姿を今に残している。
明け方シャトルバスで山頂に向かった。こんなにも不便な生活しにくい絶壁の山頂に、何千人もの人が高度な文明と共に生活していた事実に驚く。
朝の日が差す手前のまだ薄暗い静かな光の中、だんだんぼんやりと精巧な石造りの町が浮かびだす。その堂々とした姿からは、人間が持っている生き延びてゆく為の強い意思みたいなものを感じる。
僕らは息を飲む、言葉を探すが出てこない。でもこんな時人は目と目を合わせるだけで十分だ。
だんだんと明るくなる空の下、僕はしばらくその場で立っていた、土地が持つパワーにただただ圧倒されながら。
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